モノづくり 2020.02.25

「あったか寝具のNウォーム」羽毛を超える冬の寝具 商品開発への挑戦

体から発散される水分を熱に変える特殊な繊維を使用することで、寒い冬でも温かい眠りを届ける、あったか寝具のNウォームシリーズ。肌に触れた部分から、じんわりと温かさが広がるのが特徴だ。「一番温かい寝具をつくる!」そう意気込んだが、目の前には冬の寝具の王様“羽毛ふとん”の高き壁が立ちはだかっていた・・・。

化学の力で「羽毛」を超える挑戦の始まり

Nウォームが開発される以前、冬の寝具の代表格といえば「羽毛ふとん」であった。保温性に優れ、抜群の温かさを誇る一方、非常に高価格。数十万を超える羽毛ふとんもざらだった。

実は、ニトリでも羽毛ふとんの価格破壊に挑み、市場の1/30もの価格で販売し始めた歴史がある。しかし、原材料の羽毛は天然素材。鳥インフルエンザの発生等で、需要と供給のバランスが一度崩れてしまうと、価格が不安定になる。

「お客様に温かな寝具を、いつでもどんなときにも安く提供できるようにしたい。そのためには、羽毛に変わる『何か』が必要でした。ただ、その『何か』にたどり着く道のりは平坦ではありませんでした
開発を担当したひとり、@hashimitsuは、当時を振り返りこう語る。

開発担当者のひとり、@hashimitsu

想いは募る一方、開発につながるアイデアが浮かばない日々が続く。そんな折、衣料量販店では吸湿発熱の肌着が異例のヒットを記録し、冬場のスポーツウエアにも同様の機能を備えた素材が使われ始めていた。

「これだ!」

吸湿発熱する素材をニトリの寝具に活かすべく、開発計画がついに動き始めた。

0.01%の世界、糸の配合比率を調整せよ

ニトリの商品開発の特徴は、自前主義。企画から原料の調達、開発、工場の選定から製造に至るまで、すべてを自社で担っている。Nウォーム開発では、Nウォームの心臓部である吸湿発熱糸の開発には、特に譲れないこだわりがあった。

吸湿発熱と聞くと、何か新しい技術のように思えるが、その仕組みは単純明快だ。

みなさんは暑い夏の日に打ち水をした経験はないだろうか。あれは、水が蒸発するときに周囲の熱を奪う(気化熱)ことで気温が下がる現象を利用している。まさに吸湿発熱はこの逆の作用、つまり、水蒸気が水に変化するときに周囲に熱を発生させ(凝縮熱)、温かさを生む仕組みを利用しているのだ。

そしてこの仕組みは、水蒸気を繊維内に取り込み、水分に変えられる量(公定水分率)が繊維ごとに異なるだけで、すべての糸に当てはまる。例えば、ポリエステルであれば約0.4%、レーヨンであれば約11%を水分に変えることができる。

Nウォームではこの公定水分率が高い糸を使用することで、温かな寝具を実現している。それでは、この水分率が高い糸を100%使用した寝具を開発すればいいかと言えば、そう単純な話ではないと@hashimitsuは言う。

「実は吸水性の高い糸には弱点があります。水に弱く、すぐにほつれて切れてしまうのです。ですから、吸湿発熱糸とそれ以外の糸を撚り合わせる必要があるのですが、どの割合なら一番温かくなるのか手探りな状態でした

経編(タテアミ)の工程。ループを縦方向に連続して編み上げます

数十種類の糸を工場の担当者と選定し、糸に撚りをかけるのだが、その回数や太さ、撚りの回転方向によっても、糸の強度や肌触りは微妙に異なる。また、ただ温かい糸をつくればいいわけでもない。コストとのバランスも非常に重要だった。

最後は、撚糸で出来上がった生地にかじりつくようにして、工場担当者と肌触りの確認をくり返した。そうして納得のできる糸から生地を開発し、Nウォームが棚に並んだのは、開発から丸1年後のことだった。

Nウォームを超える次世代の商品を目指して

冬の眠りにぬくもりという喜びをもたらしたNウォーム。温かい寝具を、誰もが気軽に手に取れるようになった。冬の寝具は高いというイメージを崩し、アクリルにさえも負けないほどの肌さわりが良い商品を安く提供できるようになったこと、それこそがNウォームの果たした大きな役割のひとつだろう。

しかし、油断はできない。他社もしのぎを削り、お客様の暮らしを考えた商品づくりに、日夜研鑽をくり返しているからだ。@hashimitsuも危機感を抱きながら、日々次の一手を考え続けている。

「次のNウォームシリーズをつくることも我々開発担当の重要な課題です。しかし、何よりも大切なことは、お客様に満足していただけること、そして価格の安さを両立させること。この両立を実現し、お客様に受け入れられる新たな商品を生み出していくことこそが、私たちの大きな使命だと思っています。」

スローケットやスリッパなど、バリエーションも豊富

温かさを求める商品は、寝具に限ったことではない。同じ素材を使った違う分野への展開、あるいはまったく新しい素材を使用した新商品の開発もいくつか進行している。

商品開発にゴールはない。お客様の暮らしを豊かにする商品を届ける挑戦は、これからも続いていく


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