今週も、開催中の企画展「歌川広重 名所江戸百景」の出品作の中から一点をご紹介いたします。
歌川広重《深川三十三間堂》(後摺り)
安政4(1857)年
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深川三十三間堂は、寛永19(1642)年に弓術の稽古場として、京都の三十三間堂を模して浅草に建設されました。正面の柱の間が33あることから名付けられています。火事での焼失を経て深川に再建されたものの、明治5(1872)年に廃仏毀釈により解体されました。
浮世絵版画では、版木が完成し状態のよいうちに摺った版を「初摺り」、後から摺り増ししたものを「後摺り」と呼びます。上の画像は本作の後摺りですが、展示室では後摺りと一緒に初摺りとみられる版を出品しています。初摺りは屋根の雲母摺りの粒が大きくきらきらと輝き、右上の題名が書かれた「色紙型」にも霞のような模様が摺られています。
展示室で、初摺りと後摺りを見比べてみてください。(山田)
雲母摺り…鉱物や貝殻の粉を用いて摺る技法。粉に光が反射し、角度によってきらりと輝く。