今週は、開催中のトピック展「葛飾北斎特集」に出品作の中から、初公開の作品をご紹介します。
葛飾北斎《冨嶽三十六景 甲州石班澤(ふがくさんじゅうろっけい こうしゅうかじかざわ)》
天保1年(1830)~天保5年(1834)頃
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甲州は、現在の山梨県。「石班澤」は、甲府盆地を流れる富士川近くの鰍沢のこと。急流で知られる富士川に突き出した岩の上で、漁師が網を打っています。傍らには、魚籠を見守る子どもの姿。漁師を頂点に岩と網とで作り出された三角形が、遠くに見える富士山の稜線と呼応して、構図に安定感が生まれています。
ちなみに、画面左には、幕末から明治中期に活躍した絵師、河鍋暁斎の所蔵印が押されています。作品がたどってきた道のりを想像するのも面白いですね。(磯崎)