今週は、似鳥美術館4階で展示中の作品の中からご紹介いたします。
上村松園
《杜鵑一声圖(とけんいっせいず)》
制作年不詳
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雨が止んだところでしょうか。歯の高い下駄を履いた女性が、すぼめかけた傘を下ろし、ふと空を見上げています。
杜鵑(とけん)は、夏の到来を告げる鳥、ホトトギスのこと。画面の中にホトトギスの姿は描かれていませんが、女性のしぐさによって、いま、空にあの鋭い声が響いたんだな、ということが想像できます。
松園は本作の他にも、室内から窓の外へはっと視線を向ける様子や、手のひらを耳に近づけ注意深く耳を澄ませるしぐさによって、ホトトギスの声をあらわした作品を描いています。(磯崎)