今週は、開催中の浮世絵コレクション展 前期「人を描く~美人画、役者絵を中心に」出品作の中から、当館初公開の美人画をご紹介します。
喜多川 歌麿(宝暦3?~文化3年(1753?~1806))
《当時三美⼈ 富本豊ひな 難波屋きた 高しまひさ》
寛政5年(1793)
「美人画」といえば、喜多川歌麿。歌麿は、寛政4~5年頃、従来役者絵にのみ用いられていた大首絵(胸元から上をクローズアップして描く手法)の美人画を版元・蔦谷重三郎から版行し、一世を風靡しました。
本図は、「寛政の三美人」といわれた3人の女性を描いた作品。中央の桜草の紋の着物を着た女性が吉原の玉村屋抱えの芸者、富本豊ひな。右下、桐紋の入った団扇を持っているのが浅草随身門近くの水茶屋、難波屋のおきた。左下、三ツ柏紋の着物を着ているのが両国薬研堀の水茶屋、高島屋の看板娘おひさです。
背景には「雲母摺(きらずり)※」が施されており、ほのかな光沢が女性たちの美しさを引き立てています。(磯崎)
※ 雲母摺;雲母の粉を、糊を摺った部分に振りかけたり、糊や膠を混ぜて刷毛でひいたりする技法