小樽芸術村 OTARU ART BASE

お知らせ

2020/08/29

【今週の1点】岸田劉生《鵠沼風景》(新収蔵作品)

今週は似鳥美術館の新収蔵作品をご紹介します。
日本の近代洋画史に大きな足跡を残した岸田劉生の風景画《鵠沼風景》です。


岸田劉生《鵠沼風景》 油彩、キャンバス 1917年 45.6×37.3cm
画像が表示されない方はこちら

肺病と診断された劉生は1917(大正6)年2月、療養のため東京から湘南の鵠沼海岸に転居します。そこから約6年半の鵠沼時代は劉生の画業において最も充実した作画期とされており、一連の《麗子像》など数々の代表作が生み出されていきました。
劉生は鵠沼の景色を気に入っていくつかの風景画を残しており、そのうちの一つである本作は鵠沼に転居して3か月が経った5月3日に描かれたものです。
転居前の代々木時代に制作された、独自の細密描写によって路傍の草やむき出しの赤土の強烈なエネルギーを一分の隙もなく描き上げるような風景画群とは異なり、本作はのどかな田舎道の空気を柔らかい筆致で表現しています。それでいて草木や土の存在感も的確に描写されており、病気が快方に向かう中で心身ともに充実した画家の心情が読み取れるかのようです。

本作は今月より似鳥美術館3F展示室にて公開中です。ぜひ足をお運びください。(金澤)

PAGE TOP