スペシャル対談対談 寺島 実郎×似鳥 昭雄

ニトリというビジネスモデルの可能性

2逆境こそチャンス――経営者に問われる変化への対応力

寺島
ニトリは32期連続()で増収増益を記録されているわけですが、その間には消費税導入やバブル崩壊など、さまざまな環境変化がありました。そうした変化にも関わらず業績を伸ばし続けている理由に非常に興味があります。

注:2019年2月末現在

似鳥
よく「失われた20年」と言われますが、当社にとっては、むしろ大きく飛躍した20年なんですね。それができたのは、不況などで他社が動けないでいるときに、必要な資金を準備して一気に進攻したから。いわば、逆境をチャンスと捉えたからこそ成長できたのです。
寺島
先ほどお話しされたように、ニトリはアジアなど海外に供給源を求めていったわけですが、その背景には円高に向かう日本の状況があったと思います。だからこそ、業績も店舗数も拡大していけたわけですが、そこから急激な円安が進んでパラダイムが変わってしまいました。にもかかわらず、円安環境下でもニトリの業績は変わらず伸びている、そこに驚かされます。
似鳥
円安環境下でも成長できた最大の理由は、為替予約など適切なリスクヘッジをしていたことです。
寺島
とはいえ、それだけでは乗り切れませんよね。
似鳥
おっしゃる通りです。そこで、少しでも価格を抑えられるよう製造・調達する国や地域を変更したり、安価な原材料の供給先を世界中から探したり、さまざまな工夫を凝らしました。
寺島
なるほど。ただ海外で生産するだけでなく、供給源を柔軟に見直し、より効率的にマネジメントしていくことが重要なのですね。
似鳥
原料の価格についても、原料メーカー主導で決定するのではなく、私たちがお客様の求める価格から逆算して、その価格を実現する方法を一緒になって考えていきます。もちろん、結果としてお客様に支持され、原料メーカーにもメリットを提供できているからこそ、成り立っているのです。
寺島
市場に近い供給側が知恵を絞って行動に移し、その要求を製造側に理解してもらう。そうした供給側主導の戦略を徹底しているからこそ、環境変化のなかでも競争力を維持できるわけですね。